こっち(南方)に来て早…何年かちょっと忘れたけど、
最初の二年はとても美容室難民だった。
高いし遠いし必要以上にオシャレだし土地勘はないし、なんかとにかく色々とダメで結果いろいろとダメだった。要するにダメだった。
そもそも美容室があんまり好きじゃない、簡単に言うとキライ(…)
長い時間蒸し暑いオバQのコスプレしてじーっとしてなきゃいけない。
カラー+パーマ+カット+トリートメントで秋のモテ髪にチェンジ☆とかやった日には(やらないけど)、ゆうに4、5時間はかかる。
なんとゆう拘束時間だ。バイトか。
しかし金を払うのは自分である(知ってた)。
放浪のすえ、ワタシは一軒の美容室にたどり着く。
川崎のビルの三階に入っている、全体的に茶色いお店だ。
超安い。あと、平均的に腕がいい。
その中でもとりわけ腕のいいメンズがいた。
感じもよかったので、何回か通ってからはそのメンズを指名して予約するようになった。Tさんという。Tさんの安定感は素晴らしかった。いやーよかったよかった、長きに渡る放浪生活ともこれでおさらばだよ。(※ここまで前置き)
そして昨日、Tさんはワタシに言った。
「僕、今年いっぱいでここ辞めるんですよ」
……………!?
「店を持つことにしたんですよ。そっちにも来て頂けるなら有難いんですけど、この辺からはちょっと離れちゃうので……」
ええええええええええええええええええええええ
こ
困るよーーーーーーーーーーーーーーーーー
それ超絶困るよTさん!!!!!!
まあでも、その腕があれば独立したいよな…そうだよな…
俺止めないよTさん!!(当たり前だ)
……かくして、放浪生活第二章が幕を開ける。
Tさんは名残惜しそうに、ワタシについてこんな話をした。
「最初○○さん(私)って静かな人だなーと思ってたんですけど、すごいお待たせしちゃった時があったじゃないですか。あの時に突然立ち上がって棚から勝手にブルータス持ってきて読んでるの見て、わ~自由だな~って思いました」
全然いい話じゃなかった。
Tさんは「12/31までいるので、もう一回ぐらい来てくださいね~」と言った。
たしかに年内いっぱいって言ったけど、どんだけギリギリいっぱいなんだ……と思いながら店を出てきた。
Tさん(と私)の未来に幸あれ。
帰ったときに聞いた話。
田舎ゆえに静かな住宅街(つまり実家の近所)の昼下がり、
「ミーちゃんどこー!ミーちゃーん!」
とだいぶでかい声で言いながらそこらをうろうろしているおばさんがいたらしい。
玄関前で鉢植えをいじっていたウチの親は「ネコかな~子供かな~」と思いながら、近づいてくるおばさんの声を聞いていたそうだが、ふと顔をあげると、隣家の壁と物置の間の地面に、
ミニチュアダックスがぺったりしているではないか。(予想外)
なおも玄関前で鉢植えをいじっていたウチの親は「犬かよ!」と思ったそうだが、当人(犬)がまったくこちらに気付いていないので、そのまま見守ることにしたらしい。
犬は自分を探し回るご主人を「ケケケ」と言わんばかりにものかげから見ていたが、同時に毛の長い尻尾をふぁっさふぁっさと振っていた。ずーっと同じところで尻尾を振っているので、地面の小石とかがきれいになっていったそうだ。別にご主人が嫌いなわけではないらしい。
さらに見ていると犬はおばさん(ご主人)の通過に合わせて、じり…じり…と微妙に体の位置を変え、おばさんの死角に入り続ける。賢い。が、なにがしたいかわからない。
おばさんは「ミーちゃんどこー」と言い続けて通り過ぎてしまった。
犬はずっと尻尾をふぁっさふぁっさ振っていた。
なおも玄関前で鉢植えをいじっていたウチの親は、その様子をただ見ていた。
ワタシは思った。
教えてやれよ
その後、ミーちゃんは二周目のおばさんにあっさり発見されて連れて行かれた。
その時もやっぱり尻尾をふぁっさふぁっさ振っていたらしい。
結局なにがしたかったのかよくわからない。
犬も意外といたずらっこよね、みたいなことをウチの親は言っていたが、
アンタもですよ!という話であった。