突然ですが『サイザノケット』という乗り物を知っているでしょうか。
乗り物といっても日用的に使用されるものではなかったので、現在はその存在を知る人も少なくなってしまったと思いますが、ちょっと興味があるので貼っておきます。
(以下『ニッポン人がつくった物の物語』より抜粋)
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『サイザノケット』は軍用車として、昭和11年ごろから旧ソ連で使用されていた。名前だけ聞くとロケットや人工衛星の仲間のようであるが、実際はキャタピラを履き、硬い鉄板に覆われた陸上装甲車(すなわち戦車の仲間)である。陸上装甲車と書いたが、サイザノケットがおもに活躍するのは陸上ではなく、なんと「地中」であった。戦闘の際、敵の地中パイプラインを切断することがサイザノケットの任務で、もぐらのように自力で地中に潜ることのできる特殊な形状をしていた。
サイザノケットは戦車であるが砲台を持たず、余計なでっぱりをなくした、なめらかな形をしていた。もうひとつ、最大の特徴として、実際のもぐらを象った採掘機が前方上部に取り付けられていた。現在では考えにくいが、当時は実際にその「もぐら型採掘機」の中に人が入っていたのである。車体の後方にはそれを補助するための伸縮式のドリルのようなものがついており、ドリルで崩した土をもぐらがかきわけて進む、という格好であった。
この『サイザノケット』を開発したのが、実は日本人である。
(中略)南徳二郎と、桶戸末男という二名の技術者によって開発されたサイザノケットは、当初は軍用車ではなかった。
南の故郷である栃木県の農村では、よく地下水が原因の地滑りの被害に悩まされていた。村では地下水が湧くと、細い竹をまとめたものを地中に埋めて排水するという方法をとっていたが、この方法は時間がたつと土が詰まって効果がなくなってしまう。村人は排水のための本格的なパイプを導入することを考えたが、工事にはかなりの人手が必要で、農作業と工事を平行して行うことは困難であった。
話を耳にした南は同じ技術者としてともに仕事をしていた桶戸に相談し、サイザノケットの原型を作った。完成した機械を、「南」を英語にした「サウザン」と「桶戸」を合わせて『サイザノケット』と命名し、それが現在まで残っている(本来は『サウザノケット』と発音されると思われるが、文献には『サイザノケット』と記されている)。もぐらの形は、よく桶戸の自宅の庭にもぐらが出没していたところからのアイデアと言われている。
(中略)それに改良を重ね、戦車として装甲を施されたものが旧ソ連で使用されていたのである。ツンドラが支配する北方では、サイザノケットはよくその力を発揮したと伝えられている。
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